「裏切り者の細胞がんの正体」
ロバート・ワインバーグ


ある細胞がある日突然自らが属する人体を裏切って突然変異して増殖する。十億以上もの細胞にまで肥大する、その貪欲で破滅的なひとつの意志。がん遺伝子という存在。あらかじめ内蔵された死のプログラム、人体を守る為に自殺する細胞。

人体の、この眩暈がするような複雑で精妙なシステム。
けれど、がんという、生命を脅かす「敵」の正体は、外からの侵入者などではなく、体を構成しているのと同じもの、同じ細胞から生じている。生きていることが生じさせる「死に至る病」、それががんであるという事実。
それは生命の神秘なのか、限界ある現代の科学が見せる皮肉なのか、と少しシュールな気持ちになる。遺伝子と云う未知のものを研究する科学者たちの熱意や執念がすごかったから余計に。

結局暴いたって何にもならない、私たちはそういう仕組みの体で生きている。

でもがんが自分の体から生じたものだと云うことが科学的に証明されたのには何となく救いのようなものを感じた。腫瘍の正体が自分自分なら、誰かを恨んだりしなくていいし、見知らぬウイルスとかを相手にするよりは勝てる気がするから。


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