フィールド・オブ・ドリームス


堂場瞬一「8年」。8年前の対決の決着をつける為にすべてを捨ててメジャーのマウンドに立つ男が主人公ってことでベタベタな男の夢とロマンの野球小説。まとまりのない弱小チーム(日本人が作ったメジャーチームという設定)がひとつにまとまって戦っていくという展開も、あくどい嫌なオーナーという分りやすい悪役(最後は脱税で逮捕されてしまう)もいかにもスポーツもののお約束って感じでベタ。藤原(主人公)の、寡黙だけど熱い想いを秘め、分別つく年頃になっても夢を追っかけちゃうってキャラ(「マディソン郡の橋」で出てきた「最後のカウボーイ」って言葉を彷彿とさせる)もベタ…というか恥ずかしくて嫌かも…。でも「8年」のそれぞれの意味、重みが重なりあっていく部分の心情には胸を動かされるものがありました。どうしても執着してしまうポイント、苦しいのに感じてないと今生きていけないみたいな痛みというもの。自分に欠けているものがあるという強烈な自覚(コンプレックス)、その欠けたものを埋めたい(取り戻したい)と思う必死な気持ち。こういう感情を持った人って見てると苦しくなるけど、目が離せない。

「苦しむのもいいだろう、と藤原は思う。しかし、苦しみから逃れるか、苦しみと同居する方法を見つけないと、この男は何もかも中途半端なまま、アメリカを去る事になるかもしれない。それで良いわけがない、と思う。体を動かす事だ。百万のボールを受け、百万人の打者をバッターボックスに迎える。そうやって、暗い記憶を少しずつ体から追い出していくしかないのだ。」

ここの部分が一番心に残った。生きていると傷を負うけど、その傷は生きていることで癒される、むしろ生きていくことでしか癒されない。傷を負ったのはこの体だけど、この体で生きていくことに傷を癒すチャンスはある、だからこの体で生きていく意味がある。そういう考え(方法)に私は救いと希望を感じるから。

でもこの小説、野球が好きじゃない人には面白く思えないんじゃないかと思う。野球を扱った小説って大体そうだと思うけど。伊集院静の「夕空晴れて」とかも。これで泣けるかどうかは野球の経験と好き嫌いが大きいと思う。あと重松清の「キャッチボール日和」。これは野球知ってるけど、実際にはしない女の子(娘)の方が感情移入出来るかも(私は感情移入して読んだ。「父と息子のキャッチボール」へのこだわりに対する見方とか特に)。


レントゲン投影

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送